teacup. [ 掲示板 ] [ 掲示板作成 ] [ 有料掲示板 ] [ ブログ ]

 投稿者
  題名
  内容 入力補助 youtubeの<IFRAME>タグが利用可能です。(詳細)
    
 URL
[ ケータイで使う ] [ BBSティッカー ] [ 書込み通知 ] [ 検索 ]


最初のvol書いたの去年の11月だよ!

 投稿者:リーベリオン  投稿日:2005年 8月18日(木)11時59分15秒
  半年以上かけてんじゃねーですよこの程度に、
ってな感じですが。

ミサトさんの影が薄いですね…
一応、加持視点→ミサト視点→リツコ視点で
書いてたつもりなんですが。
リツコさんのとこだけ妙に長くなってるんですよね、
書き終わってみると。

しっかしどこら辺がLKMRなのか問いたい。
問い詰めたい。小一時間(ry
 
 

「Bullets」lastvol.R-part

 投稿者:リーベリオン  投稿日:2005年 8月18日(木)11時51分15秒
  古びれた建屋の前に、その男は立っていた。
退屈そうに煙草をくゆらせる男の足元には、
数十本の吸殻が山と積もっている。

男は空を見上げた。
太陽はまだ高く、
サングラス越しに見える光源も目に痛い。
だが、それでも太陽を見続けているのは。

もしかしたら、『己が生きている』という
実感を感じ続けていたいからなのかもしれない、
等と考えてしまった自分がひどく滑稽に思えて
男は少しシニカルな笑顔を浮かべた。

不意に、男の耳に機械音が届いた。
ただ広いだけの砂地のような土地に、
車、おそらくはスポーツカーの排気音が
鳴り響くのはとても不釣合いな空間だろう。

音の方をようやくと男が振り向くと、
一台の乗用車が彼の目の前に停まった。

そして車から降り立った女性を前に、
男はいつもの笑顔を浮かべて。

「よう、遅かったじゃないか」

加持リョウジの普段と変わらない笑顔は、
逆に赤木リツコの表情から笑みを奪っていた。



『やあ、俺だけど』
──かけてくると思ってたわ

『俺の居場所、もう割れてるんだろ?』
──ええ、勿論。予測の範囲内ではね

『葛城に教えるつもりなのか?』
──聞いてどうするの?

『さて、ね。俺としてはどっちかに来て欲しいところなんだが』
──……貴方のそういうところ、好きよ



「訊いても良いかな」
加持の言葉が聞えなかったかのように
リツコはゆっくりと懐から煙草を取り出し、火をつけた。
「……何?」
煙を大きく吸い込んだ後、漸くの一言。
そんなリツコの無遠慮にも思える仕草にも
加持は何も言わず、言葉を続ける。
「どうして、俺を助けたんだ」

静寂。

廃屋やその周辺からは、物音一つしない。
鳥の囀りも、風の嘶きも、草木の囁きすらも。

「……言ったでしょ」
「ああ、聞いた」
「だったら」
「本当の理由は、まだ聞いてない」

血まみれの身体で目覚めた自分に、
彼女が告げた理由。

親友を、恋人殺しにさせたくないから。

「俺を死んだことにした、本当の理由。
……こんな弾丸まで使ってね」

加持がポケットから潰れた弾丸を取り出す。
赤い染料と麻酔薬を埋め込んだ
特殊な弾丸だと彼女は言っていた。

「助かったと思ってるのなら、大きな間違いよ。
補完計画が遂行されれば、そうして地面に
立っていることに意味は無くなるのだから」

そして、おそらくもう誰にも止めることは出来ないのよ、
とリツコは呟くように言い添える。

「なら尚更こんな手の込んだ真似をする必要は無い、だろ?」

リツコは答えなかった。
いや、答えることが出来ないのかもしれない。

ちゃんと理由は色々あった筈なのに、
今それを並べ立てるとどれもこれも白々しいのだ。

「碇司令に背いた事にもなるんじゃないのか」

リツコの瞳に動揺の色が浮かんだ。
知っていて言っているのだろうか、司令との関係を。

「利用価値があるうちは、まだ切り捨てられないでしょう」
あなたと同じよ、とリツコはこのとき初めて笑顔を見せた。
極めて自嘲的な笑顔を。
「そうか、そうだな」
自分と同じように、利用価値が無くなれば
彼女もあっさりと見捨てられるのだろう。
碇ゲンドウという男の酷薄さは、
誰よりも加持が一番よく知っているのかもしれない。

「逃げられないのよ、あなたも私も」

何気無しに口をついて出た台詞だったが、
その言葉こそが核心である事にリツコは気付く。

「そうだな。見届けなきゃいけないな」

加持もその言葉の深意を理解した。
自分の目的の為に補完計画の一役を担った責任が、
彼らにはあるという事だ。

「これからどうするの?」
「さて、どうするかな」
自分の生きる意味は、
あの時弾丸を胸に受けた時点で終わったと思っていた。
これからどう生きれば良いのかなど、皆目見当も付かない。
「とりあえず」
新しい煙草をシャツの胸ポケットから取り出し、火をつけた。

「色々見て回ろうかと思ってる。
俺の、俺達の果たした役割が、どんな人間に、
……どんな世界に影響を及ぼすのか見ておきたいしな」

一口に人類の滅亡、あるいは新生と言っても
今の自分には自分と周りの人間達だけが全てなのだ。
自分の手を伝った計画が、自分の知らない人間達を、
世界を巻き込んでいくという事実を改めて認識しておきたい、
という思いが加持にはあった。

「そう……じゃ、そろそろ行くわ」
死人と会話している等、本来あってはならない。
だが、おそらくこれが加持と人の姿をして話す最後になるだろう
と思うと、リツコの行動を少しだけ鈍らせたのだ。
「気をつけてな」
言ってから、気休めにもならない台詞だと加持は思った。
どのみち人類は終わりなのだから。
それは進化への階段か、破滅への扉かはわからないが。

加持とリツコの視線が絡み合う。
そして、どちらともなくそれはゆっくりと近付いていく。



──最後の口付けは、最初の時と同じに煙草の味がした。



fin
 

自分もですw

 投稿者:らくだ  投稿日:2005年 7月11日(月)12時17分26秒
  これからさらに忙しくなるので泣けますよ・・・TT
とりあえず時間はちょくちょくまだあるかなっという感じですね。

加持さんとうとう死んでしまっても続くとは・・・
一体この話はどこまで続くのかなぁと思ってみたり。
ミサトさんあたりが死ぬ頃ぐらいかなぁと予測を立てつつ、
リーベリオンさんガンバです。
 

ちょっとこれは

 投稿者:リーベリオン  投稿日:2005年 7月10日(日)20時37分8秒
  時間経ちすぎですな。
最近前にも増して時間が取れなくて、
まあこんなもんでしょうけど。
 

無念。

 投稿者:リーベリオン  投稿日:2005年 5月 6日(金)00時31分56秒
  今回で終わらせようと思ってたのに
終わらないじゃないか。

GWだというのにこの遅筆っぷり。
この程度の文章量に対して、
ほぼ一日作業になっているのは何故なのだろう…。

というわけで2ヶ月近く放置してなんなのですが、
まだ少し完結は遠そうです(をい

>らくださん
で、まだ続いちゃうことになってしまいました。
まあ気が向いたら読んでやってくださいです……
 

「Bullets」lastvol.M-part

 投稿者:リーベリオン  投稿日:2005年 5月 6日(金)00時26分40秒
  眼下で血の海の中に横たわる男を見下ろしながら、
葛城ミサトはその場に立っていた。

男、加持リョウジが何事か呟いているのが聞こえる。

苦しんでいるのなら止めを刺すべきなのだろうが、
加持の顔は安らかで、近い死神の来訪を予感させている。

ミサトは踵を返した。
その瞳は翳ってはいるが、強い光も同時に感じさせる。
迷いの無い眼。
足取りからも、全く愛した男を殺した動揺など見て取れなかった。

屋外に出ると、そこには一人の女性が待っていた。
足元に落ちている大量の煙草の吸殻から、
随分待っていてくれたのだろう事が分かる。
「待たせたわね」
「早かったじゃない」
同時に口に出した。
その言葉からは、どちらも相手への気遣いが感じられて。
だから、二人は顔を見合わせて少し口の端を歪めたのだ。

彼女がミサトへ手の平を差し出した。
ミサトは少し考える風をした後、
諦めたように銃を赤木リツコの手の平に載せる。

「……後の処理は任せて頂戴」
「悪いわね。その上送り迎えまでやらせちゃったりして」

ミサトの労いの言葉に、リツコはふっと微笑で返すと
そのまま車に乗り込んだ。



車の中でも、二人は無言で。
張り詰めた空気という程ではないものの、
とても世間話をするような雰囲気でもけして無く。
夕闇に辺りが染まっていく景色が窓の外を流れていくのを、
葛城ミサトはぼうっと眺めていた。
「ねえ」
不意にミサトが口を開いた。
リツコは視線を前から外さず、「何?」とだけ答える。
ミサトもリツコに顔を向けようともせず、ただ窓の外を眺めたままで。
「これで良かったのよね」
抑揚の無い声。
少しの間を置いて、リツコが口を開いた。
「後悔、してるの?」
ミサトは答えない。
「……人間ってね」
無言のままのミサトを見かねた訳ではないだろうが、
リツコが言葉を続けた。
「常々に選択肢を己の中に作り出し、その中で最上の手段として
判断したものを常に選択するようになってるのよ。
だから、『選択の余地が無い』というのは厳密には嘘。
どんな恫喝も脅迫も、選択の余地は残しているのよ」
ただ大抵の人は選ばないだけ、と付け加える。
「随分と即物的な物言いをするのね。それって結果論じゃないの」
漸くとミサトが口を開いた。
相変わらず視線は窓の外ではあるが。
「確かに結果論ね。他にもっと良い選択肢があったことに後で気付いたり、
違う選択をしていれば良かった、と結果的に考えるのがつまり
後悔と呼ばれるものなのだから」
「別に後悔しているわけじゃないわ」
リツコが僅かに眼だけをミサトへ向ける。
やはりミサトは窓の外を眺めたままで。
「手段と方法に関しては、ね」
そう続けたミサトの真意が読めず、リツコは言葉を待った。
暫くの静寂。
「ねえリツコ」
やはり、ミサトが口を開いた。
「私で良かったのよね」
『私で』に込められた微妙な強さのアクセント。
リツコはミサトの言葉の意味を理解した。
だが、いやだからこそ答えに迷う問いだった。
「……大学の時、貴女と彼の関係を知ってショックだったわ」
リツコが逡巡していると、ミサトは言葉を紡ぎ始めた。
「それ以上に怒りを、憎しみを勿論覚えた。でもね」
不意に、リツコに顔を向き直す。
ミサトの口には微笑が浮かんでいた。
「ほんの少しだけ、嬉しかったのよ。加持リョウジという人間を、
私と同じようにリツコが愛してくれたこと…彼を認めてくれたことが」
「そんなんじゃないわ」
リツコも堪らず重い口を開ける。
「あの時の私は…貴女を、親友を裏切る背徳感からの、
サディスティックな快感に身を委ねていただけよ。
愛とか恋とか、そんな純粋な感情じゃ無かった」
「嘘ね」
「嘘じゃない」
間髪入れずに返した答えが本当かどうか、
当のリツコにも分かっていない。
だが、当時の甘酸と劣情を思い出したく無くて。
否定することで、それらを忘れてしまいたかったのだろうか。
「貴女が男を利用することが出来ない女なのは、
私が一番良くわかってるわ」
何を分かった風な事を、という言葉をリツコは呑み込んだ。
それは、僅かに向けた視線の先にあったミサトの横顔が、
惹きこまれる程に艶やかな憂いを帯びていたから。

マンションの前に辿り着き、短い礼と共に車を降りようとしたミサトに。
「一人で大丈夫?」
無表情ながらも、気遣う言葉をかけるリツコに、ミサトも苦笑した。
「ダイジョーブダイジョブ。……それに一人じゃないわよ」
マンションの窓の明かりは、
家族の一人である少女の在宅を告げてくれている。
もう一人の家族は、未だ入院中であるが。
「…そうね」
最もそれは、別の問題の側面でもあるのだ。
リツコの脳裏を、加持に纏わり付く少女の姿が過ぎる。
「じゃーねん」
笑顔での言葉も、精一杯の強がりに見えた。

一人玄関の前に立つ頃には、
お茶らけていた先程までの陽気さは完全に消えていた。
無言のまま玄関の扉を開け、頼りなげな足取りで歩みを進めていく。
ふと、ゆっくりと点滅する赤い光に気付いた。

留守番電話の録音メッセージの存在を教える、光。

ミサトは弾かれたようにその光を指先で押した。

『ピー!』

『葛城、俺だ』

『多分この話を聞いてる時は、
君に多大な迷惑をかけた後だと思う』

『すまない』

『もし…もう一度会える事があったら、その時は』

『あの時、言えなかった言葉を言うよ』

『葛城。真実は君と共にある。迷わず進んでくれ』

『TELメッセージ、午後零時二分です』

電話の置かれたテーブルに、ポタリと雫が落ちた。
「バカ…」
そして、まるで雨が降り出したかのように、二滴、三滴。
「バカよ、アンタ……。ホントに、バカ……」
テーブルに突っ伏して、嗚咽が響く。
止まらない慟哭。
こんな、機械に録音された言葉が。
どうしてこんなにも、人間を感じさせるのだろう。

自分を呼ぶ声がする。
異変に気付いて部屋から出てきた亜麻色の髪の少女が、
己に何か問いかけている。

ミサトは、少女に返す言葉を持つことが出来なかった。
少なくとも今、この時だけは。
 

長い・・・

 投稿者:らくだ  投稿日:2005年 4月 9日(土)13時13分16秒
  気が付けば四月入ってる・・・

ここまで書き込めるとは恐るべき掲示板。
読んでてなんか読んだことあるなぁとか思っていたら、ばっちし読んでたとこだった。w
忘れてるところが合ったからちょうど良いと思って読んでました。

最後の部分読んだあと↓を見て
これで最後じゃないのか!と驚いてみたり
テレビ風味に行けば撃ったのはあっちの人だと思うが、最後はどうなるのでしょう。
まったり待ってみたーり。ガンバっすよ
 

あ、間違えた

 投稿者:リーベリオン  投稿日:2005年 3月23日(水)15時42分44秒
  パート分けして書き込もうとしたら、
なんと全部書き込めてしまいました。

文字数制限はどーなってるんだ一体w

まあいいや、折角なのでこの続きをまたそのうちに。
つーか次で最後と言ってたんじゃないのかよ
というツッコミは全くその通りなのですが、
やっぱり無理です僕には。時間が掛かりすぎる。

気が付けば一ヶ月以上経ってるし。
自分でもビックリですよホントに
 

「Bullets」lastvol.K-part

 投稿者:リーベリオン  投稿日:2005年 3月23日(水)15時36分54秒
  ピピー、ピピー、ピピー。
電子音と共に深紅のカードが公衆電話から吐き出された。
見慣れた筈のそれが、何故か少し新鮮に見える。
誰に聞かせる為でもなく、加持リョウジが呟く。

「まるで、血の赤だな」

左腕の腕時計は、午後12時を少し過ぎていた。



薄暗い部屋。
独房とも言われる部屋とはいえ特に不潔という訳でもないベッド。
そこに腰掛け、葛城ミサトは物思いに耽っていた。
頭の中を占めるのは、かつての恋人の事ばかり。

冬月副司令の誘拐。
その主導を行ったのが加持だという。

一体何故…?

いや、何故という事も無い。

彼女は知っていた。
いつかこんな日が来る事を。
分かっていて、それでも気付かない振りを?
いや、それとも少し違う。

望んでいた?
そう、私は彼がこうする事を望んでいたのだ。
自らの思いのまま、信念を貫いて目的を果たす事を。
…命を落とすことも辞さずに。

彼が見ているものが何なのか、昔は分からなかった。
だが、今になってみれば理解出来るような気がする。

「リツコの言った通り、か」

誰が聞いているというわけでもないのだが、彼女は呟いた。


ネルフ本部。
格納庫に沈んでいるエヴァンゲリオン初号機。
その前に立つ、意識を思考に埋没させている金髪の女性。

…今、『彼』はどうしているだろう。

彼女の脳裏に、はにかんだ様な笑顔を見せていた男の顔が浮かんだ。

副司令の誘拐も、考えられていた一つのパターンに過ぎない。
遠からず冬月は解放されるだろう。
しかし、そうなれば『彼』の身柄はどうなるか。

昔は好きになれない男だった筈なのに。

「あの、先輩」
振り向くと、そこには伊吹マヤが書類を抱えた格好で立っていた。
「ごめんなさい、どうかした?」
「それが…レイに召集をかけたんですけど、まだ来なくて。
居そうなところは探したんですけど」
不安げな表情のマヤに、もしや自分が心配されているのかとも思える。
安心させようと微笑んだ。
「珍しいわね、彼女が無断で行方をくらますなんて。
…仕方ないわ、テストは午後からに延期して」
「良いんですか?」
意外とも思える言葉に、流石のマヤも思わず抗議とも取られかねない返答。

「偶には息抜きも必要よ…」

正直、今の自分の意識にも調整が必要かもしれない。
午後までには元の『仕事の虫』に戻らなければ。

…相変わらず仕事の虫かい?

ああ、そう言えばそれは彼の言葉だった。

赤木リツコはそう思い至ると、
やはり意識を完全に切り離せない自分を嘲笑った。



苛ついたように煙草を灰皿に押し付ける彼女を見ながら、
加持リョウジは薄い笑みを浮かべていた。
只一人の親友である彼女に、葛城ミサトは猫なで声を出して
纏わりつき、宥めようと必死になっている。
しかし彼女は全く取り合わず、ただ不機嫌な声で
「別に説教垂れるつもりは無いわ。御勝手に」
こちらに顔も向けずに立ち去っていった。
その態度には流石にミサトも腹を据えかねたか、舌を出して膨れっ面。
「なーによ、もう!…リツコったら、ホントお堅いんだから」
そんな二人のやり取りを、加持は何も言わず、ただ眺めていた。



「大体リツコには心に余裕が無いのよ。
そりゃ一週間も代返させたあたしが悪いんだけど、
ああまで意地にならなくったって良いじゃない…
ね、アンタもそう思うでしょ?」
既に顔は朱に染まっており、相当酔いが回っていることは容易に見て取れる。
「葛城…呑み過ぎだぞ。全くしょうの無い奴だな」
明日も午前中から講義を受けないといけない筈なのだが。
このままでは、また大親友に代返を頼まねばならないだろう。
本末転倒とは正にこれである。
「呑み過ぎ~?なぁに馬鹿なこと言ってるのよ。
ようやくこれから本番だっつーの!今までのは食前酒よ」
そんな事よりリツコよリツコ、とまた愚痴を再開。
この居酒屋に入ってから二時間、ミサトは赤木リツコの事以外話していない。
「全くリツコはねえ~男ギライだし、すーぐ人を小馬鹿にするし、
お説教好きだし、無愛想だし…えーと、それからそれから…」
指折り数えてリツコの欠点を挙げていくミサト。
加持は苦笑した。
「まあ、確かに男受けするタイプじゃないな」
同じ大学に通っている事であるし、何度か見かけてはいたが。
とても気安く話しかけられる雰囲気を持ってはいなかった。
他は他、己は己と割り切る型の女性のようだ。
するとミサトは生ビールジョッキをカウンターに叩きつけて
「はぁ?そりゃリツコの魅力が分かんない、甲斐性無しの男ばっかりって事よ!
リツコは美人だしスタイル良いしよく気が付くし面倒見良いし
困った時はいつも助けてくれるし頭良いし何でも知ってるしそれに…」
今度は指折る必要も無い様子で、リツコの長所を羅列していく。
加持はそんなミサトに、また苦笑いを浮かべた。



彼を見かけたのは全くの偶然だった。
最初は店を変えようかと思ったが、お気に入りの店であるし、
それに彼の為に自分が気を遣うのは癪に障る。
ので、いつもの席から少し離れたカウンターテーブルに着いた。
ここなら気付かれにくいだろう。
まあ気付かれてもどうと言うことは無いが。
バーテンダーの注文にブラッディ・マリーといつもの様に返し、
灰皿を引いて煙草を咥えた。
頭を占めるのは親友の愚行についてである。
体調が悪い、と人に代返を毎日のように頼んでおいて何をしていたかと思えば、
夜は朝まで呑んで昼は淫秘に耽っていた等とは全く呆れ返る。
そんなにあんな男が良いのだろうか。
と彼に目をやろうとすると、先刻の場に彼はもう居なかった。
帰ったのだろうか、と少し安堵しかけたが、
「やあ、奇遇だねえ」
背後から声を掛けられてげんなりする。
無視しようかと思ったが、流石にそれも憚られて、
「ミサトは?」
精一杯に刺々しさを込めて、一緒じゃなかったの、と訊ねた。
「悪酔いしちゃってね。アパートに先に連れ帰ったよ。
俺は少し呑み足りなくて、又足を伸ばしたってわけ」
だが加持は、そんなリツコの物言いにも全く動じる事無く。
それどころか断りも無く、図々しくも隣に座る。
「無遠慮な人ね。それとも、それも魅力の一つだとか思ってる?」
「こりゃ手厳しいね。まあ当たってると言えば当たってるかも」
全く、信じられない程に軽い男だ。
リツコの鬱積は溜まる一方であった。
「この際だからハッキリ言っておくけど。
私…貴方の事好きになれそうも無いわ」
普段ならここまで辛辣な事は言わないリツコであるが、
如何せん柳の如きこの男には、何を言っても
躱されそうだと思っているからであろう。
「そりゃ残念だね。俺はリッちゃんの事、結構好きなんだが」
リツコの手から思わず煙草が落ちた。
心の動揺を隠すように、ゆっくりと煙草を拾って口へと運ぶ。
「…リッちゃん?馴れ馴れしいのにも程があるわよ」
今まで誰一人、その呼び方をした友人は居なかった。
親友であるミサトでさえも。
そう、その呼び方で自分を呼ぶのはたった一人だけ。
「あれ?苗字で呼んだほうが良かった?」
おどけた様な顔を見せる加持に、ほんの少し戦慄を覚えた。
まるで自分の心を覗き見られたような感覚。
「貴方…一体何を知ってるの」



「…この行動は、君の命取りになるぞ」
冬月コウゾウの痛苦に歪んだ顔は、決して厳しい訊問の為だけではない。
トリプルスパイとしての彼の能力は実際大したものであったし、
若い逸材が己より早く逝く事は慙愧に堪えないからだ。
「もとより、覚悟の上です」
だが加持リョウジの顔は、悲観も諦観も映してはいない。
あくまでも淡々と述べてはいるが、
しかしある種に強い決意のようなものも窺える。
「どうするつもりかね、これから」
今更の憂慮など、年寄りの冷や水以外の何物でもない。
なれば、冬月の興味はこれよりの加持の動向に尽きないのも確か。
「さて?それは副司令の御想像にお任せします」
全く、この男は。
掴み所が無いというか……どうしてこのように、
恐怖を知らぬような笑顔を浮かべる事が出来るのだろう。
自分とてセカンドインパクトの惨禍の直中を駆け抜けてきた筈なのだが、
彼のような笑顔を浮かべることなど出来そうもない。
「今度、一緒に一杯呑るかね」
おそらくは実現しないだろう誘いにも、加持は笑顔で応じる。
「ええ是非。……副司令、色々とお世話になりました」
差し出された手を、冬月は暫く考えてから握り返した。
独り身を通した冬月には在る筈も無い、己が息子を夢想して。
「達者でな」



ご協力ありがとうございました、と差し出された拳銃とIDカード。
数日前に自分が差し出したそれとは微妙に色褪せて見える。
薄暗い部屋なので只の錯覚であろうが、
その感覚が何故か葛城ミサトの胸をざわめかせた。
「もう…良いの?」
その問い自体には余り意味は無い。
答えは予期せぬものでは在りえないし、なれば必要な発言である筈も無く。
ただ、何か言葉を発せずにはいられなかったのだ。
不安と焦燥だけに埋められた心思を払拭する為には。
はい、問題は解決しました…そう答える男の顔は、あまりにも無表情で。
まるで生きた人間の気がしない。
「そう」
銃を手に取る。
底冷えするほどに冷たい銃把に、改めてこの武器の無機質さを感じた。
銃とIDカードを懐に収め、暫しの逡巡の後に呟く。
「……彼は?」
もう部屋を出ようとしていた背中が、ほんの僅かこちらへと向き直される。
存じません、とだけ告げて彼は直ぐ部屋を後にした。
見送りは無しか、と微笑を浮かべたのは僅か一瞬。
ミサトは胸内の銃を強く握り締めると、瞳に強い光を宿らせた。



飾り気の無い着信音が鳴った携帯電話を取ると、
液晶画面に表示されている名前を見て、顔に笑みが浮かぶ。
「かけてくると思ってたわ」
口調は抑揚の無いものではあったが、笑顔のまま。
だがその笑顔はどこか悲しげで、儚げで。
「……ええ、勿論。予測の範囲内ではね」
瞳には虚ろささえも感じられる程に。
電話を頭で挟み、器用に煙草を取り出して火をつける。
その単純な一連の動作にすら、
普段の彼女を知っている者なら違和感を感じるであろう。
「聞いてどうするの?」
微かに震えている煙草の先。
斜に構えて軽い口調で紡がれる言葉とは裏腹に、
彼女の心の動揺は隠すことが出来ないままであるのか。
電話の向こうの相手が何事か言ったのを聞くと、
彼女はまた小さく、薄く、そして悲しそうに笑った。
「……貴方のそういうところ、好きよ」
そして、一言二言答えたあと、電話を切った。
暫く電話を握り締めたまま立ち尽くしていたが、
不意に視界がぼやけ始めたのに気付いて顔を上げる。
頬を伝う雫の意味を、赤木リツコは理解しようとは思わなかった。



頬を赤らめ、顔を伏せる彼女を見て、
加持リョウジは『もう一息だ』と内心ほくそ笑む。
「怖がらなくてもいいさ。男女の機微を知るのも、
人生に対しての勉強だとは思わないかい?」
そっと手に触れてみた。
やはり瞬間は驚きで震えたようだが、離れようとはしない。
陥落、などという言葉が頭に浮かんだ時。
「加あぁ持いぃぃぃいぃい?」
背後から大地を揺るがすような呪詛の声が鳴り響くと、
全身から汗が噴き出るような錯覚を感じた。
一応振り返ってみたが。
同時に、左頬に綺麗な右フックの一閃が決まった。



「全く、何なのかしらあいつ!あれは病気ね病気」
愚痴を零し続ける葛城ミサトの苛立ちが益々募る頃には、
もう既に生ビール中ジョッキが5本程空になっていた。
隣の席に着いている金髪の女性も、少し呆れ顔でミサトを眺めている。
「だから言ったでしょう。彼はあんな性格だし、苦労するわよって」
窘めるわけではないが、宥めるわけでもなく。
全くもって冷静で的確な意見に、流石のミサトも毒気を少し抜かれたようで。
「でもさあ。そりゃ私だって浮気の一つや二つぐらいじゃ、
目くじら立てるつもりはないわよ。でもあいつったら、年がら年中アレだし、
それも違う大学とか、私にバレないようにやるんならともかく…。
同じ大学の子を、あんなにあからさまに狙うことないじゃない」
憤りだけの言葉ではなく、真摯な気持ちを吐露していた。
それは、赤木リツコを本当に頼りにしているからに他ならない。
「…そうね」
リツコはミサトの方を見ずに、
ワイングラスに映った自分の顔をじっと見つめていた。
そんな友人の様子に、ミサトは少し違和感を感じて、
「何よ、リツコ。真剣な顔しちゃって」
茶化して言えば、彼女に笑顔が戻るかとも思ったのか。
だがリツコにそんな友人の思慮は届かなかったのか、
硬い表情のままミサトに顔を向けた。
「もしかしたら貴女と加持君は、見てるものが違うのかもしれないわね」



「やあ、お待たせ」
ドアを開けると、そこにはいつもの軽い笑顔。
「どうぞ」
無愛想に応じ、部屋へと促した。
「へー…良い部屋に住んでるねぇ。高いんじゃないの、家賃?」
辺りに目をやりながら、感嘆のため息を漏らす。
分類するなら苦学生に入る彼にとって、
こんな目を見張らせるような部屋に住むは全く羨望の的。
「多分ね」
「多分?」
家賃を幾ら払っているのかも知らないのか?
と思ったが、その瞬間気付く。
「…払ってるのは、私じゃないもの」
少し寂しげに呟く彼女。
その理由を察して、彼はいつものおどけた口調に切り替えた。
「しかしどういう風の吹き回しだい?
鬼のリッちゃんが、俺なんかを自宅に呼んでくれるなんて」
わざわざ貶めるような言い方をするのも、
加持リョウジ流の人心掌握術だろうか。
だが、リツコは少し乾いた笑顔を見せただけで。
「コーヒーで良い?」
加持の返事を待たずにコーヒーカップを2つ取り出す。
「ああ、悪いね」
そう答えながら、胸元をまさぐる。
喫煙の許可を貰おうと思ったが、
テーブルの上に吸殻の山が積まれた灰皿を見て、思わず顔が綻ぶ。
「リッちゃん、少しは健康にも気を遣った方が良いよ」
「貴方も、遣ってるとは言えないんじゃない?」
確かに、と自分の自堕落な生活習慣を省みて加持は苦笑した。
タバコに火をつけて一息つくと、前のテーブルにコーヒーカップが置かれた。
「ありがと…ん?」
早速カップに手を伸ばそうとしたが、目の前に数枚の紙が突き出される。
「飲みながらで良いから、それをちょっと読んで」
「何?ラブレター?」
冗談に笑わないのはいつもの事だった。
軽く肩を竦めた後、書類に目を通す加持。
リツコは突っ立ったまま、そんな加持をカップ片手に見下ろしている。
暫くして加持は読み終えると、書類をテーブルに静かに置いた。
「…これは?」
問いかけてきた加持の顔には、いつもの軽い調子は全く浮かんではいない。
その突き刺すような鋭い視線に、リツコは少しゾクリとした。
「載ってる名前に覚えがあるでしょ?
今まで貴方が『仲良くなろうとした』女の子達の、調査書よ」
僅かといえ、気圧された事を気付かせないよう
抑揚は無いが強めの口調で言い放つ。
「君は、友人の恋人の素行調査をするのが趣味なのかい?」
冗談めかしてはいるものの、加持の目は全く笑っていない。
「……。加持リョウジ。20歳。本名不詳。
18歳の時、行き倒れていた所を助けた加持家にそのまま引き取られる。
……しかしそれ以前の経歴は一切不明」
リツコの言葉にも加持は口の端を歪めただけで、何も動じた様子は無い。
「…何者なの、貴方は?」
加持はやはり答えない。
リツコは言葉を続けた。
思いの丈をぶち撒けるかのように。
「貴方が近付いた人間は皆、ゲヒルン、いえ人工進化研究所や
5年前の南極探検隊の関係者ばかりよね?
…私が貴方をわざわざ此処に呼んだのは、こんな話を
なるべくミサトには聞かれたくなかったからよ。自分に近付いた理由が、
セカンドインパクト唯一の生き残りだったからなんて話はね!」
義憤。
リツコの険しい視線はそれを表しているのか。
しかし、やはり加持は何の感慨も受けてはいないようだった。
「……取引しましょう。今すぐミサトの前から消えて、
二度とその前に現れないと誓うなら、この話は不問にしてあげる。
貴方が調べている事は、命がいくつあっても足らない程大きな事件なのよ」
言外に脅しをかけた。
然るべき所に告げれば、加持の命を奪うことなど造作無いのだから。
「……リッちゃん」
「その呼び方は止めてって言ってるでしょう!」
ようやく口を開いた加持の言葉を、リツコは叫ぶように制した。
だが加持はそんなリツコに構うことなく。
「どうして、封書にして俺に送るとかにせず、直接俺に読ませたんだい?」
加持が立ち上がった。
テーブルを回り、リツコの真正面に立つ。
僅かに危険を感じて、リツコは少し後ずさった。
「そ…それは、ミサトに読まれるかもしれないと思ったからよ。
貴方のアパートにはミサトが、彼女の所には貴方が入り浸ってるし」
成る程、と加持が笑う。
その笑顔が驚くほどに蠱惑的で。
瞬間、惹きこまれそうになった。
「それだけかい?」
加持の顔がゆっくりと近付いてくる。
リツコは顔を背けない。
視線を逸らし、この男から逃げ出したい筈なのに。
「どうしたの?」
リツコの頬を加持の指が拭った。
水滴。
泣いている?何故?
「…落ち着いて。深呼吸して、目を閉じて」
加持の声が、震えるほどに優しい。
何故かその言葉に抗えなかった。
「少しの間だけ、何もかも忘れるんだ……」
己が唇が塞がれた感触。
相手の背に腕を回したのが、どちらが先だったのかわからない。
リツコの手にあったカップが床に落ち、
カーペットに染みを広げていく事など、今の二人には些事に過ぎなかった。



もう何本目になるかわからない煙草の煙を燻らしながら、
加持リョウジは其処で待っていた。
待っている間、退屈を紛らわせる為でもないが
色々な思考が頭の中を埋めていく。

まず感じていたのは自分の限界でもある。
世界を裏で支配する輩と渡り合うには、
己の力、いや存在は余りにも矮小過ぎた。

もし自分が、エヴァンゲリオンを操る事が出来れば。

だがそんな事を考えることなど無意味である。
この世界の未来は、あの純粋であるがゆえに脆い
少年少女達に任せるしかないのだから。

はにかんだ様な笑顔の少年を思い浮かべ、
彼に重なるようにもう一人の少年の顔が浮かんだ。

俺は彼にあいつの、弟の姿を重ねているのかもしれない…。

弟を殺したのは、自分だ。
だからこその罪滅ぼしの為の戦いだった。

いやいや、それはただの言い訳だ。
結局俺は、死ぬのが怖かっただけ──。

──なら、何故俺は今こんなに落ち着いていられるのだろう?

真実を得るために命がけで戦ってきた理由。
死ぬのが怖いなら、目を閉じて耳を塞いで、
盲聾唖者になって生きれば良かったのだ。

そんな事は出来る筈も無い。

だから、命を懸けて戦う事で、
己の罪から目を逸らそうとしていたのかもしれない。

『なあ、俺はこんなに頑張ってるんだ、だから許してくれよ』

はは、と加持の顔に自嘲的な笑みが浮かんだ。



真実。

それを得るための戦いだった。
そしてそれは、冬月副司令の解放を条件に碇ゲンドウより引き出す事も出来た。
自分の戦いは終わった。

知ってみれば、何と呆気ない顛末だったのだろう。

世界の深淵を知ってしまった老人達の狂気が、
全人類を破滅へと導く……。
いや、あるいはそれは進化への扉なのだろうが。

そして同じく世界の深淵を知った自分には、
この狂気の計画を狂気と思えなくなっている。

俺は狂っているのだろうか?
狂っているとすればいつから──?

物狂いに自覚など在るはずも無い。
だから計画を止めるかどうかは、彼女に任せる事にしたのだ。



彼女。

自分にとってその単語をこの場で使いたい人間は、ただ二人だけ。
一人はかつての恋人、そしてもう一人はその親友。
以前は二人とも、己が目的を果たす為の道具に過ぎなかった。

だが、彼女達の心の中身を知ってしまった今は。
同じような、そしてまるで違う、
心の闇を持っている事を知ってしまった今は。

そう、今の加持リョウジの最も強い関心は。



どちらが殺しに来てくれるのだろうか


という事であるから。

あるいは、全く別の第三者がやって来ないとも言い切れない。
だが、あの二人なら。

きっと誰をも出し抜いて、自分の所に来てくれる筈だ
と加持は信じていた。

だから、彼女がようやくその姿を見せた時。
全く驚きもせず、ただ一言こう呟いただけだったのだ。



「……よう、遅かったじゃないか」



銃声が、鳴り響いた。
 

多分

 投稿者:リーベリオン  投稿日:2005年 2月 6日(日)15時54分32秒
  次で終わりです。
何か最近忙しすぎて、色んな事が後手に回っております。
続きは気長にお待ちください…ってオイ。
 

レンタル掲示板
/11